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佐武一郎『線型代数学』

2013-01-05 公開

佐武一郎『線型代数学』(裳華房、1974年)。

日本語で書かれた線型代数の教科書としては、『線型代数学』と斉藤正彦『線型代数入門』(東京大学出版会)が双璧で、共に2006年に日本数学会第二回出版賞を受賞している。 私は学部2年の秋から学部4年の夏にかけて、自主セミナーで読んだ。 なお、最初は1958年に『行列と行列式』として刊行されて、1974年に「テンソル代数」が増補されて『線型代数学』となった。

学部1年の講義で習った線型代数は、行列をいじり、連立方程式を解き、対角化の手順を覚え、試験を過ぎたら忘れる代物だった。 つまり、工学的要請から基本変形のやり方だけを教える天下り的な内容で、数学としての面白さがなかった。

意外に思われるかもしれないが、『線型代数学』はベクトル空間から始まる本ではない。 例えば、伊吹山知義『線型代数学』はベクトル空間の定義から始まる。 行列と行列式から始まり、第III章で初めてベクトル空間の定義が登場して、今まで習った概念を整理していく。 連立方程式の解法は、像と核の次元の関係として整理される。 行列の対角化は、固有空間による直和分解として整理される。 単なる基本変形のやり方に留まらない、数学を学んだのが佐武先生の『線型代数学』である。

第IV章「行列の標準化」までは、講義で躓いた人にも読み通してほしい。 第V章は輪講で苦しんだ章だが、線型代数の広大さを感じる章である。 まさに『行列と行列式』から『線型代数学』にタイトルが変わった所以である。